10月14日、国土交通省より、建設工事における一括下請負の判断基準の策定等について発表・通知されています

以下、まず一括下請負の禁止の規制について確認した上で、今回の発表の内容について、国土交通省報道発表資料をもとに、簡単にご紹介したいと思います。

一括下請負の禁止について

一括下請負の禁止の原則について

建設業法では、建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならず、また、建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負つた建設工事を一括して請け負つてはならないことが定められており(建設業法第22条第1項、2項)、このことを「一括下請負の禁止」といいます。

このような規制を設けたのは、一括下請負は、発注者の建設業者に寄せた信頼を裏切ることになり、また責任の不明確化等により建設業の健全な発達を阻害するおそれがあるためとされています。

民間工事(共同住宅を新築する建設工事を除く)の例外(発注者の書面による承諾)

ただし、例外として、民間工事については、共同住宅を新築する建設工事を除き、事前に発注者の書面による承諾を得た場合は、これらの規定の適用が除外されます(同条第3項、同法施行令6条の3)。

なお、国、特殊法人等又は地方公共団体が発注する建設工事(公共工事)については、こうした例外が認められず、一括下請負が全面的に禁止されています(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律第14条、第2条2項)。

国土交通省通知による解釈の明確化

もっとも、いかなる場合に「一括して他人に請け負わせ」ることになるかが必ずしも明確ではないことから、従来より国土交通省通知(「一括下請負の禁止について」(平成4年12月17日付け建設省経建第379号。以下、「旧通知」といいます。)によって解釈基準を示し、明確化を図ってきました。

今回の発表(通知)について

中央建設審議会小委員会中間とりまとめと新通知

今回、中央建設審議会小委員会中間とりまとめ(平成28年6月)を受け、実質的に施工に携わらない企業を施工体制から排除し、不要な重層化を回避するため、新たに通知(平成28年10月14日付け国土建第275号。以下「新通知」といいます。)を発出し、一括下請負の判断基準の一層の明確化を図ることとなりました。

新通知における主な変更点

一括下請負に該当するか否かの判断は、旧通知によって

①請け負った建設工事の”全部若しくはその主たる部分”又は”一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の建設工事”につき、自ら施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせているかを判断し、この基準にあてはまると考えられる場合に、

②元請負人がその下請工事の施工に「実質的に関与」しているか否かを判断する

ことによって行われてきたところ、今回新たに発出された通知では、②の「実質的に関与」の内容を具体化し、元請・下請それぞれが果たすべき役割を具体的に定め、明確化しています。

新通知における判断基準に関する具体的な内容

一括下請負該当性の判断基準に関する、今回の発表の具体的な内容は以下のとおりです(記者発表資料より一部抜粋)。

二 一括下請負とは

(1)建設業者は、その請け負った建設工事の完成について誠実に履行することが必要です。したがって、元請負人がその下請工事の施工に実質的に関与することなく、以下の場合に該当するときは、一括下請負に該当します。

① 請け負った建設工事の全部又はその主たる部分について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合

② 請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の建設工事について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合

(2)「実質的に関与」とは、元請負人が自ら施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導等を行うことをいい、具体的には以下のとおりです。

① 発注者から直接建設工事を請け負った建設業者は、「施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導等」として、それぞれ次に掲げる事項を全て行うことが必要です。

(ⅰ)施工計画の作成:請け負った建設工事全体の施工計画書等の作成、下請負人の作成した施工要領書等の確認、設計変更等に応じた施工計画書等の修正
(ⅱ)工程管理:請け負った建設工事全体の進捗確認、下請負人間の工程調整
(ⅲ)品質管理:請け負った建設工事全体に関する下請負人からの施工報告の確認、必要に応じた立会確認
(ⅳ)安全管理:安全確保のための協議組織の設置及び運営、作業場所の巡視等請け負った建設工事全体の労働安全衛生法に基づく措置
(ⅴ)技術的指導:請け負った建設工事全体における主任技術者の配置等法令遵守や職務遂行の確認、現場作業に係る実地の総括的技術指導
(ⅵ)その他:発注者等との協議・調整、下請負人からの協議事項への判断・対応、請け負った建設工事全体のコスト管理、近隣住民への説明

② ①以外の建設業者は、「施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導等」として、それぞれ次に掲げる事項を主として行うことが必要です。

(ⅰ)施工計画の作成:請け負った範囲の建設工事に関する施工要領書等の作成、下請負人が作成した施工要領書等の確認、元請負人等からの指示に応じた施工要領書等の修正
(ⅱ)工程管理:請け負った範囲の建設工事に関する進捗確認
(ⅲ)品質管理:請け負った範囲の建設工事に関する立会確認(原則)、元請負人への施工報告
(ⅳ)安全管理:協議組織への参加、現場巡回への協力等請け負った範囲の建設工事に関する労働安全衛生法に基づく措置
(ⅴ)技術的指導:請け負った範囲の建設工事に関する作業員の配置等法令遵守、現場作業に係る実地の技術指導
(ⅵ)その他:自らが受注した建設工事の請負契約の注文者との協議、下請負人からの協議事項への判断・対応、元請負人等の判断を踏まえた現場調整、請け負った範囲の建設工事に関するコスト管理、施工確保のための下請負人調整
ただし、請け負った建設工事と同一の種類の建設工事について単一の業者と下請契約を締結するものについては、以下に掲げる事項を全て行うことが必要です。

○ 請け負った範囲の建設工事に関する、現場作業に係る実地の技術指導
○ 自らが受注した建設工事の請負契約の注文者との協議
○ 下請負人からの協議事項への判断・対応

なお、建設業者は、建設業法第26条第1項及び第2項に基づき、工事現場における建設工事の施行上の管理をつかさどるもの(監理技術者又は主任技術者。以下単に「技術者」という。)を置かなければなりませんが、単に現場に技術者を置いているだけでは上記の事項を行ったことにはならず、また、現場に元請負人との間に直接的かつ恒常的な雇用関係を有する適格な技術者が置かれない場合には、「実質的に関与」しているとはいえないことになりますので注意してください。

また、公共工事の発注者においては、施工能力を有する建設業者を選択し、その適正な施工を確保すべき責務に照らし、一括下請負が行われないよう的確に対応することが求められることから、建設業法担当部局においても公共工事の発注者と連携して厳正に対応することとしています。

(3)一括下請負に該当するか否かの判断は、元請負人が請け負った建設工事一件ごとに行い、建設工事一件の範囲は、原則として請負契約単位で判断されます。

(注1)「その主たる部分を一括して他の業者に請け負わせる場合」とは、下請負に付された建設工事の質及び量を勘案して個別の建設工事ごとに判断しなければなりませんが、例えば、本体工事のすべてを一業者に下請負させ、附帯工事のみを自ら又は他の下請負人が施工する場合や、本体工事の大部分を一業者に下請負させ、本体工事のうち主要でない一部分を自ら又は他の下請負人が施工する場合などが典型的なものです。

(具体的事例)
① 建築物の電気配線の改修工事において、電気工事のすべてを1社に下請負させ、電気配線の改修工事に伴って生じた内装仕上工事のみを元請負人が自ら施工し、又は他の業者に下請負させる場合
② 戸建住宅の新築工事において、建具工事以外のすべての建設工事を1社に下請負させ、建具工事のみを元請負人が自ら施工し、又は他の業者に下請負させる場合

(注2)「請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の建設工事を一括して他の業者に請け負わせる場合」とは、次の(具体的事例)の①及び②のような場合をいいます。

(具体的事例)
① 戸建住宅10戸の新築工事を請け負い、そのうちの1戸の建設工事を一社に下請負させる場合
② 道路改修工事2キロメートルを請け負い、そのうちの500メートル分について施工技術上分割しなければならない特段の理由がないにもかかわらず、その建設工事を1社に下請負させる場合

上記の他に、今回の発表では、「一括下請負に対する発注者の承諾」(22条3項、4項関係等)及び「一括下請負禁止違反の建設業者に対する監督処分」についても言及、明確化されています。

なお、具体的にいかなるケースが一括下請負とされるのか等につき、今回発表において具体例が示されていますので、実際の請負契約締結等の際には参考になると思います。

今回の発表の全体及び詳細につきましては、参考リンクの記者発表資料をご確認ください。

(参考)【建設業法第22条】

(一括下請負の禁止)
第二十二条  建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。
2  建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負つた建設工事を一括して請け負つてはならない。
3  前二項の建設工事が多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの以外の建設工事である場合において、当該建設工事の元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときは、これらの規定は、適用しない。
4  発注者は、前項の規定による書面による承諾に代えて、政令で定めるところにより、同項の元請負人の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて国土交通省令で定めるものにより、同項の承諾をする旨の通知をすることができる。この場合において、当該発注者は、当該書面による承諾をしたものとみなす。

参考リンク等