中小企業等経営強化法に基づく建設業分野に係る経営力向上に関する指針の制定に関し、意見公募手続き(パブリックコメント)に係る指針案の公示がされています(案の公示日:8月12日、意見・情報受付締切日:9月12日)。

※追記:10月13日付けで「建設業分野に係る経営力向上に関する指針」として公布・公表されています(国土交通省告示第1136号(「官報」平成28年10月13日付け第6877号))。

 

中小企業経営強化法は、中小企業・小規模事業者等の経営強化を図るため、所管大臣が事業分野ごとに指針を策定し、経営強化の取り組みを支援する措置等を講じることなどを定めており、平成28年7月1日に施行されました

 

中小企業・小規模事業者等がこの支援措置等を受けるためには、大臣の定めた事業分野別指針にしたがって、経営力向上計画を作成し、認定を受ける必要があります。

本件は、国土交通大臣の定める建設業分野に係る経営力向上に関する指針案に関する意見公募手続きです。

概要

指針案は、①「現状認識」②「経営力向上に関する目標」③「経営力向上に関する事項」④「経営力向上の促進に当たって国が配慮すべき事項」⑤「事業分野別経営力向上推進業務に関する事項」⑥「適用範囲」の6項目からなっています。

このうち、②「経営力向上に関する目標」及び③「経営力向上に関する事項」が事業者の経営力向上計画作成に直接関係する項目となっており、その概要は以下のとおりです。

②「経営力向上に関する目標」

指針案は、経営力向上計画に設定すべき目標として、経営力向上計画の計画期間(3年間ないし5年間)、経営指標(「労働生産性」を経営指標とします。)、経営目標(計画期間に応じ、1~2%以上)の3点を定めています。

③「経営力向上に関する事項」

上記の目標を達成するために、指針案は、経営力向上計画に盛り込むべき実施事項として、6項目(①人に関する事項、②財務管理に関する事項、③営業活動に関する事項、④新技術・工法の積極的導入、⑤中長期的な人材確保に向けた人への投資、⑥建設企業のイメージ向上につながる取組)を掲げており、これらのうち、計画を作成する事業者の規模(常時使用する従業員数)に応じて、計画において設定すべき項目の数を定めています。

「建設業分野に係る経営力向上に関する指針(案)」

建設業分野に係る経営力向上に関する指針(案)(一部省略)は以下のとおりです(file:///C:/Users/hiroshi/Downloads/s15516031402%20(1).pdf(e-govサイト))。

建設業分野に係る経営力向上に関する指針(案)

第1 現状認識

1 建設業の特徴

建設投資額は、平成4年度の約 84 兆円をピークとして、平成 22 年度には約42 兆円まで落ち込んだ後、ここ数年は持ち直しが見られ、ピーク時からは約4割減少した水準ではあるものの、平成 27 年度の建設投資額は約 49 兆円となっている。

平成 27 年度末の建設業者数は、ピークとなった平成 11 年度末から約2割減少の約 47 万業者、平成 27 年平均の建設業就業者数は、ピークとなった平成9年平均から約3割減の約 500 万人となっている。

2 建設業の課題

建設業は、我が国の住宅、社会資本、さらには都市や産業基盤の整備に不可欠な産業であり、現場で直接施工を担う技能労働者によって支えられる産業である。

技能労働者の数は、ここ数年、安定した建設投資を背景として堅調に推移しており、足許の労働者需給についても緩和傾向にあるなど、現時点においては、全体として技能労働者の不足という状況は見られない。

しかしながら、平成 27 年度における技能労働者数約 330 万人のうち、55 歳以上が約 112 万人と約3分の1を占める一方、29 歳以下は約 36 万人と約1割に留まっており、労働者の高齢化は他産業と比べより進行している。

今後、高齢者の大量離職を控え、生産年齢人口が減少する中、建設業が成長を果たしていくためには、「人への投資」と「経営のイノベーション」を両輪として人と企業が共に成長する「人材投資成長産業」を目指し、官民が一丸となって担い手の確保・育成と生産性向上に取り組んでいくことが求められている。

他産業との人材獲得競争が厳しさを増す中、優秀な人材に建設業を選択してもらい、入職・定着を促すためには、安定した雇用、安定した収入、将来に夢と希望を持てるキャリアパスの提示など、処遇・やりがい・将来性といった様々な観点において他産業よりも魅力的な仕事の場を提供することが必要である。

生産年齢人口の減少を補うとともに、限られた人材の処遇改善につなげていくため、業界全体でイノベーションを喚起し、建設現場の生産性向上を目的として、ICT技術の全面的な活用等を目指す「i-Construction」の推進や新技術情報提供システム(以下、「NETIS」という。)を始めとした新技術・新工法の導入、人材の効率的活用など抜本的な生産性の向上に向けて取り組んでいくことが重要である。

第2 経営力向上に関する目標

1 経営力向上計画の計画期間

計画期間は3年間ないし5年間とする。

2 経営指標

計画策定に当たり、建設業を営む中小企業者等(中小企業者等とは、中小企業等経営強化法第二条第一項に規定する中小企業者等をいう。以下「事業者」という。)が目標として設定すべき経営指標は、中小企業等の経営強化に関する基本方針(平成十七年総務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省告示第二号。以下「基本方針」という。)のとおり「労働生産性」とする。なお、生産現場が多数の技能労働者に支えられ、高度な分業体制が確立されている建設業の実態を踏まえ、技能労働者に支払われる給与等である「完成工事原価のうち労務費」や下請建設企業に支払われる「完成工事原価のうち外注費」を付加価値の構成要素と捉えた指標を用いることが、建設業の現場生産性を把握する上でより有効であるため、以下の二又は三に掲げる算出方法による指標を追加することとし、事業者が経営力向上計画を策定する場合は、いずれかの指標を用いることができることとする。

一 基本方針

指標の種類欄に記載する名称:「労働生産性・基本」
・ (営業利益+人件費+減価償却費)÷労働投入量(労働者数又は労働者数×一人当たり年間就業時間)

二 建設業(推奨)

指標の種類欄に記載する名称:「労働生産性・推奨」
・ (完成工事総利益+完成工事原価のうち労務費+完成工事原価のうち外注費)÷年間延人工数

三 建設業(簡易)

指標の種類欄に記載する名称:「労働生産性・簡易」
・ (完成工事総利益+完成工事原価のうち労務費)÷直庸技能労働者数

3 経営目標

事業者が、2の経営指標を用いて経営力向上計画に定める目標は、その計画期間に応じて以下のいずれかのものとする。

一 3年間の計画の場合 1%以上
二 4年間の計画の場合 1.5%以上
三 5年間の計画の場合 2%以上

第3 経営力向上に関する事項

1 経営力向上の内容及び実施方法に関する事項

事業者は、自社の現状を分析の上、以下の内容及び実施事項等を参考として経営力向上に向けて改善すべき点を把握し、経営力向上に取り組むこととする。経営力向上計画には、下記を参考に目標達成に向けて必要な実施事項を定めることとする。

一 人に関する事項

イ 教育訓練の充実
・ 一人あたり生産性の向上に向け、地域の教育訓練施設等も活用し、新規入職者の早期戦力化、登録基幹技能者の養成等の教育訓練の充実に取り組む。

ロ 生産性向上に向けた複合工(多能工)の育成・活用
・ 一人あたり生産性の向上に向け、限られた人材の効率的活用を促進する観点から、複合工(多能工)の育成・活用に取り組む。

ハ 従業員の処遇改善
・ 月給制の導入や週休2日の確保、社会保険加入や福利厚生の充実等、従業員が働きやすい職場環境の整備に取り組む。

二 財務管理に関する事項

イ 原価管理の高度化
・ 原価管理の高度化を通じ、自社の損益分岐点の把握や実効性のある年度事業計画の策定等に取り組む。
・ 中長期事業計画の策定を通じた赤字耐久力の把握、市場分析を通じて想定した将来のリスクケースに対する備えの有無の検証等に取り組む。

ロ 社内業務の効率化
・ 会計システムの更新等のICT機器活用を通じ、税務会計、財務会計及び管理会計を統合的に活用することにより、税効果やキャッシュフロー改善効果の把握に取り組む。

三 営業活動に関する事項

イ 年間受注計画の策定
・ 発注情報の適時の収集、発注者との良好な関係の構築、新規発注者の開拓等を通じた年間受注計画の策定と受注獲得の実現に取り組む。

ロ 適正な利潤を確保した受注
・ ネットワーク工程表の活用や管理方法の深化、人材の効率的活用等による年間業務の平準化を通じ、適正な利潤を確保した受注に取り組む。

四 新技術・工法の積極的導入

イ ICT施工の実施、コンクリート工における生産性向上技術の活用等、i-Constructionの推進
・ ICT建機の導入、ICT施工の実施、ICT環境の整備、ICT対応人材の育成及びコンクリート工における生産性向上技術の活用等、i-Constructionの推進に積極的に取り組む。

ロ NETISを始めとした新技術・新工法等の導入
・ NETISを始めとした新技術・新工法等の導入による生産技術の向上を通じた生産性向上に取り組む。

ハ 生産性向上に資する取組の導入
・ 建設資材メーカーや建機メーカー等、建設業と関連する異業種と連携し、作業効率改善に資する高機能素材や機器等の開発・活用等の試行・検討等に取り組む。

五 中長期的な人材確保に向けた人への投資

イ 中長期的な人材の確保・育成
・ 計画的な新卒採用の継続、地域・業界団体・事業者が連携した広報活動の実施、採用ルートの拡充、将来に夢と希望をもてるキャリアパスの提示等、優秀な人材の中長期的な確保・育成に取り組む。

ロ 人事評価体系整備や管理システム投資等
・ 平成 29 年度からの運用開始が目標とされている「建設キャリアアップシステム」の導入・活用や技能労働者の効率的な活用に取り組む。

ハ 女性や高齢者の活躍推進
・ 職場環境の整備や産休・育休制度の導入、時短勤務やエリア限定職の導入、高い技能を有する高齢者の指導者としての活用等、女性や高齢者等が多様で柔軟な働き方が可能となるように取り組む。

ニ 事業の円滑な承継に向けた取組
・ 経営後継者の育成等の事業承継に向けた環境整備、事業承継計画の策定等、事業の円滑な承継に向けて取り組む。

六 建設企業のイメージ向上につながる取組

イ 社会・地域に向けたPR活動
・ 社会・地域に向けたPRイベントの実施や地域イベントへの参画等を通じた建設企業のイメージ向上に取り組む。

ロ 環境負荷軽減に配慮した事業の展開
・ 省エネルギー、温室効果ガスの排出削減等に配慮した施工の実施等環境負荷軽減に配慮した事業展開に取り組む。

ハ 防災・減災等社会・地域の持続的発展に対する有償・無償の貢献
・ 自治体との防災協定の締結やBCP(事業継続計画)の策定による災害対応力の確保、寄付等を通じた地域復興への貢献に取り組む。

2 規模別の整理

1の内容及び実施事項について、経営力向上計画において設定する項目数は、事業者の常時使用する従業員数毎に下記のとおりとする。

小規模事業者
(常時使用する従業員 20人未満)
中規模事業者
(常時使用する従業員 20 人以上 300 人未満)
中堅事業者
(常時使用する従業員 300 人以上 2000 人未満)
一~四から1項目以上
※ 上記に加え五~六のう
ち1項目以上に取り組
むことを推奨
一~四から2項目以上
五~六から1項目以上
一~四から3項目以上
五~六から2項目以上

第4 経営力向上の促進に当たって国が配慮すべき事項

(省略)

第5 事業分野別経営力向上推進業務に関する事項

(省略)

第6 適用範囲

本指針の適用範囲は、日本標準産業分類に定めるもののうち、建設業に分類される事業者に適用されるものとする

(参考)中小企業等経営強化法について

中小企業経営強化法の概要は以下のとおりです(「「中小企業等経営強化法」が施行されました」http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/2016/160701kyoka.htm(中小企業庁ウェブサイト))。

「中小企業等経営強化法」が施行されました

平成28年7月1日

本日、「中小企業等経営強化法」が施行されました。
本法律では、中小企業・小規模事業者・中堅企業等を対象として、(1)各事業所管大臣による事業分野別指針の策定や、(2)中小企業・小規模事業者等への固定資産税の軽減や金融支援等の特例措置を規定しています。

法律の趣旨

労働力人口の減少、企業間の国際的な競争の活発化等の経済社会情勢の変化に対応し、中小企業・小規模事業者・中堅企業(以下「中小企業・小規模事業者等」という。)の経営強化を図るため、事業所管大臣が事業分野ごとに指針を策定するとともに、当該取組を支援するための措置等を講じます。

法律の概要

1.事業分野の特性に応じた経営力向上のための指針の策定

事業所管大臣は、事業者が行うべき経営力向上のための取組(顧客データの分析、ITの活用、財務管理の高度化、人材育成等)について示した「事業分野別指針」を策定します。
(※)具体的には、製造、卸・小売、外食・中食、宿泊、医療、介護、保育、貨物自動車運送業船舶、自動車整備等を公表。

2.中小企業・小規模事業者等による経営力向上のための取組の支援
(1)経営力向上計画の認定及び支援措置

中小企業・小規模事業者等は、人材育成、コスト管理のマネジメントの向上や設備投資等、事業者の経営力を向上させるための取組内容などを記載した事業計画(「経営力向上計画」)を作成します。計画の認定を受けた事業者は、機械及び装置の固定資産税の軽減(資本金1億円以下の会社等を対象、3年間半減)や金融支援等(低利融資、債務保証等)の特例措置を受けることができます。

(2)認定経営革新等支援機関による支援

認定経営革新等支援機関(主に商工会議所、商工会、中央会、金融機関、士業等)による計画策定の支援を受けられます。

3.手続の簡素化

申請書類は実質2枚。窓口に提出しなくても、郵送による送付も可能です。

参考サイト

  • ”建設業分野に係る経営力向上に関する指針(案)に関する意見募集について”、http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=155160314&Mode=0(e-govサイト)
  • 「経営サポート「経営強化法による支援」」http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/(中小企業庁ウェブサイト)